医療法人が個人診療所を医療法人の分院(法人の診療所)として取り込むといったケースが稀にあります。医療法人が個人診療所を承継(M&A)したり、個人診療所を持つ個人医師が医療法人を承継(M&A)し、承継した医療法人の理事長になるとともに個人診療所を法人診療所として取り込む場合などです。
定款変更になるため、都道府県の認可が必要
行政手続きにおいては、一般的な医療法人の分院開設の手続きとほとんど変わりはありません。
定款変更が生じるため、新診療所開設に係る資金計画・事業計画等とあわせて都道府県に認可申請をし、2~3か月の審査期間を経て、認可後に法務局登記、保健所での開設許可の流れです。また、前提として取り込む診療所の医師を理事にするか又は医療法人の既存理事を管理者とするかで都道府県への役員変更届の提出も必要となります。
認可・法務局登記後の手続きの流れ
認可・法務局登記を終えた後の手続きは、医療法人設立時と同じ流れを踏みます。
個人診療所の各種廃止手続とともに法人診療所の各種開始手続きを保健所・厚生局・その他各種機関に対して行っていきます。大きく異なる箇所は保険医療機関指定の遡及手続がない事です。
気を付けたい最重要ポイント
医療法人が個人診療所を医療法人の分院(法人の診療所)として取り込むケースでは、承継時の手続きに注意が必要です。医療法人の承継(売買)契約は、診療所の価格を「償却資産上の簿価以下」で行わなければならないといった医療法上の縛りがあります。つまりのれんを含む価格としては契約はできません。この承継(売買)契約に係る契約書は認可申請で提出する必要があり、償却資産上の簿価より高額で取引してしまった場合は、認可はまず通らないため、注意が必要です。こちらの契約時の各種取り決めについては、承継(売買)にM&A会社を挟むケースも多いかと思いますが、契約締結前に医療法に詳しい弁護士や行政書士を同席させることをお勧めします。
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