クリニックの顧問先で、MS法人(メディカルサービス法人)を併せて設立しているケースは珍しくありません。むしろ、税理士の先生ご自身が設立をご提案されたという場合も多いかと思います。
そのMS法人との取引が、毎年の都県への事業報告書の届出書類に記載されているかどうか。ここを確認されたことはあるでしょうか。
医療法人には「関係事業者との取引」の報告義務があります
医療法人は、毎会計年度終了後に事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書、関係事業者との取引の状況に関する報告書を作成し(医療法第51条第1項)、都道府県知事へ届け出なければなりません(医療法第52条第1項)。
このうち見落とされやすいのが、最後の「関係事業者との取引の状況に関する報告書」です。平成29年あたりの医療法改正で導入されたもので、それ以前から続いている法人ほど、様式が更新されていないまま提出されている例があります。
何が「関係事業者」にあたるか
関係事業者にあたるのは、その医療法人と特殊な関係にある者です。具体的には、理事長やその配偶者・近親者、これらの者が代表者を務めていたり議決権の過半数を保有していたりする法人などが該当します。
MS法人は、理事長やそのご家族が株主・代表者になっている構成がほとんどですので、典型的に関係事業者にあたります。
報告の対象となるのは、一定の基準額を超える取引です。基準は医療法施行規則に定められており、取引金額や事業収益・事業費用に占める割合で判定します。具体的な判定方法は様式の記載要領に示されていますので、所管の都道府県のものをご確認ください。
| MS法人との典型的な取引例・建物や医療機器のリース料 ・医事業務や事務の受託料 ・医薬品や消耗品の仕入・駐車場や職員寮の賃借料 ・人材派遣や給与計算の委託料 |
なぜここが重要なのか ― 非営利性の問題に直結
医療法人は剰余金の配当が禁止されています(医療法第54条)。ここでいう配当は、株主配当のような直接的なものだけを指しません。
MS法人へ支払う賃料や委託料が、近隣相場や役務の内容に照らして著しく高額である場合、実質的に剰余金を分配しているのと変わらないと評価される可能性があります。最も見られるポイントのひとつです。
つまり、この報告書は「取引があるかどうか」を届け出るだけの書類ではなく、取引条件の妥当性を説明する書類でもあるということです。
確認していただきたい点
賃料や委託料の水準に説明がつくか
近隣相場の資料、業務内容と対価の対応関係、契約書の有無。行政より問われるのはこの点です。逆に言えば、平時に整えておけば恐れるものではありません。
おわりに
MS法人の設計そのものは、適正な対価であれば問題ありません。論点になるのは、届出をしていないこと、そして対価の説明がつかないことの2つです。
顧問先に医療法人とMS法人の組み合わせがある先生は、まず直近の届出書類の控えをご確認いただくところから始めてみてください。
| 税理士の先生からのご相談を承っています当法人は医療分野に特化し、医療法人の設立認可・分院開設認可から、事業報告書等の届出・役員変更といった維持手続きまでを取り扱っています。税理士の先生からのご相談も多くいただいており、顧問契約をお預かりすることはございませんので、その点はご安心ください。顧問先が医療法人である場合の確認事項をまとめたチェックリストもご用意しています。行政書士法人Dee(医療分野専業) dee-iryou.com | |

