医療法人のM&Aの中でも、とくに論点が多いのが「持分あり医療法人」の買収です。上場企業や事業会社が、再生医療・自由診療などの分野で医療法人を取りにいくケースも出てきており、「持分あり」をどう引き継ぐかが、ディールの成否を左右します。
この記事では、持分あり医療法人のM&Aのスキームの基本と、注意点を、医業に特化した行政書士が解説します。
「持分あり」と「持分なし」―まずここが分岐点
医療法人には、大きく「持分あり」と「持分なし」があります。
- 持分あり医療法人:出資者が「出資持分」を持ち、その持分に財産的な価値がある(主に過去に設立された経過措置型)
- 持分なし医療法人:出資持分という概念がない(現在、新規設立は原則こちら)
M&Aで重要なのは、持分ありの場合、その出資持分をどう移すかが中心論点になることです。持分なしの法人とは、まったくスキームが変わります。
持分あり医療法人のM&Aの基本スキーム
持分あり医療法人を実質的に引き継ぐ場合、一般的には次のような要素を組み合わせます。
- 出資持分の譲渡:既存の出資者から、買い手側へ出資持分を移す
- 社員・役員の入替:社員総会・理事会を通じて、経営権を移す(新しい理事長の選定など)
- 定款変更・各種認可・届出:体制変更に伴う手続き
ポイントは、株式会社の「株式譲渡」とは違うということです。医療法人は非営利法人であり、「株主」はいません。経営権は、出資持分の移転と、社員・役員の構成の変更を組み合わせて移します。ここが、一般企業のM&Aと最も違うところです。
注意点①:非営利性は、買収後も守られる
買い手が事業会社であっても、医療法人の非営利性は変わりません。買収後も、剰余金の配当禁止、特別の利益供与の禁止といったルールは適用され続けます。
「会社が医療法人を買って、利益を吸い上げる」という発想は通用しません。買収後の運営設計も、非営利性の枠内で組む必要があります。
注意点②:持分の評価・税務
出資持分には財産的価値があるため、その評価と、移転に伴う税務(譲渡所得、場合により贈与税等)が、ディールの大きな論点になります。ここは税理士の領域で、評価次第で税負担が大きく変わるため、早い段階からの連携が欠かせません。
注意点③:行政の審査・手続き
社員・役員の入替、定款変更などには、都道府県への届出・認可が関わります。都道府県によっては、経営権の移転や譲渡価額について慎重に見ることもあります。「契約を結べば終わり」ではなく、行政の手続きまで通して、初めて完了です。
デューデリジェンスは必須
持分あり医療法人の買収では、財務・税務・許認可の各面でのデューデリジェンスが欠かせません。簿外債務、過去の運営の問題、持分の帰属関係——これらを買う前に調査し、リスクを把握しておくことが、安全なディールの前提です。
まとめ
- 医療法人M&Aは、「持分あり/なし」でスキームが根本的に変わる
- 持分ありは、出資持分の譲渡+社員・役員の入替で経営権を移すのが基本
- 株式会社の株式譲渡とは別物(医療法人に株主はいない)
- 買収後も非営利性は維持される
- 持分の評価・税務、行政の手続き、デューデリジェンスが重要論点
持分あり医療法人のM&Aは、行政書士法人Deeへ。 医業に特化した行政書士法人として、グループの株式会社ディーホールディングスと連携し、スキームの設計から、社員・役員の入替・定款変更・各種認可、許認可面のデューデリジェンスまで対応します。持分の評価・税務は提携の専門家と連携。事業会社による医療法人の取得など、複雑なディールもご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 医療法人は、株式会社のように株式譲渡で買えますか? いいえ。医療法人に株主はいません。持分あり医療法人では、出資持分の譲渡と社員・役員の入替を組み合わせて経営権を移します。
Q. 事業会社が医療法人を買ったら、非営利性はなくなりますか? いいえ。買収後も医療法人の非営利性(配当禁止など)は維持されます。
Q. いちばんの論点は何ですか? 持分の評価・税務と、行政の手続き、そして買う前のデューデリジェンスです。

